あなたの毎日に続く、
PlaySの物語

PlayS開発者・事業責任者
坂上大介

坂上大介

PlaySは、女性に育てられました。

PlaySは僕ひとりで作ったブランドではありません。女性たちに教えられ支えられ、育てられてきたブランドです。

最初のきっかけは、1995年の阪神・淡路大震災でした。当時高校生だった僕は、発災から4日目にボランティアとして被災地へ向かうことを決めました。

出発2日前、学校の教室の終わりの会で「何を持って行けばいいと思う?」と聞いたとき、ひとりの女子が迷いなく言いました。

「そら、ナプキンやろ」

正直に言うと、そのとき高校生男子の僕の頭にあったのは、カロリーメイトやカイロくらいでした。生理用品という発想はありませんでした。

家に帰って親と妹のナプキンをもらい、クラスの女子たちには翌日、それぞれが使っているナプキンを持ってきてもらい、それだけをリュックに詰めて被災地へ向かいました。

坂上大介 PlayS
坂上大介 PlayS

目次:

  • 被災地神戸で握られた手
  • 何もできなかった時間、何かできるかもと思った時間
  • 売れなかった日々と、やめかけた話
  • このブランドが存在する理由

被災地神戸で握られた手

30年前の大震災です。当時は生理用品にまで気が回らず、当事者の女性たちも言い出せなかったのだと思います。ティッシュで代用している人もいました。

ナプキンを持ってきた僕は、驚くほど歓迎されました。おばさんが僕の手をつかみ「あんた、よう気づいたなぁ」と。

そのとき、初めて思ったのです。「生理って大変なんやな。生理用品ってこんなに大切なんやな」と。

ただ、この気づきが、すぐに何かを変えたわけではありません。

僕はその話を、帰ってきてから誰かに話したのか、話してないのかも記憶がありません。

その春から新たに大学生活が始まったこともあり、僕は「生理」について、特に深くは考えない、普通の男子になっていました。震災という特別な場所での体験のため、現実の生活と結びつかなかったのかもしれません。

神戸

何もできなかった時間、何かできるかと思った時間

大学を卒業して、テレビ業界で働き始めました。現場では同僚の女性たちが、サニタリーを替えるタイミングがないまま働いている話を聞きました。

ロケに行くと、なかなか替えるタイミングがない。中継で山奥に行くと、替える場所がない。

仕事で出会ったアスリートからは「オリンピックと重なった。サニタリーがボトボトになって集中できなかった」という話も聞きました。部活生も悩んでいました。

チーフディレクターになり、自分の制作会社も持つようになりましたが、それでも、できることはほとんどありませんでした。話は聞ける。状況も、少しは想像できる。

鎮痛剤を用意したり、ロケのシフトを考えたり、会社の古いトイレをウォシュレットに替えたり。でも彼女たちの根本の悩みは解決しません。

「わかっているけど、何もできない」その距離感のまま、時間だけが過ぎていきました。

転機になったのは、母が婦人科系の病気になったことでした。「子宮脱」という骨盤底筋の筋力低下とともに子宮が下りてくる症状です。

ネットで治療について調べる中で「フェムテック」というものに出会いました。

女性特有の健康課題をテクノロジーで解決するというもので、「吸水ショーツ」や「月経カップ」の存在を知りました。2019年のことです。

「これは職場の子たちの役に立つものかもしれない」

社員の女性に聞いてみると「すごく興味がある」とのことでした。知人女性の何人かも興味を持ち、みんな試しに使ってくれました。

「坂上さん、月経カップは難しかったんですが、吸水ショーツはすごいかもしれません」

「すごい」と思いました。が、同時に浮かんだのは「これで本当にスポーツはできるのだろうか。トップ選手が大舞台で使えるものなのだろうか」

いろいろな人に生理の話を聞かせてもらううちに、強く感じるようになったのは、一番切実に困っているのはアスリートではないかということでした。

もしオリンピックの舞台でも使えるショーツが作れたら。それはテレビの現場で働く人や、アクティブに働く人にとっても、きっと意味のある選択肢になる。

そんな思いから、テレビ番組を作る自分の会社で、ひとりで吸水ショーツを作り始めました。PlayS(プレイショーツ)は、こうして生まれました。

坂上大介 PlayS開発

PlaySを作り始めるといっても、僕は女性でもなければ、アパレル経験もありません。

当時はまだ吸水ショーツということ自体も知られていない中、下着を作っている工場に電話やメールをかけました。

もちろん僕の知識の問題、お金の問題などで、ほとんどが門前払いでしたが、30社ほどに連絡して、1社が「やってみましょう」とOKしてくれました。

働き手が女性だけの下着メーカーで、尿漏れショーツは作ったことがあるが、サニタリーは初めてとのことで、ぜひ一緒にチャレンジしたいと言ってくれたのです。

それから僕は、何度も「これは男性の自分にはわからないこと」の連続でした。当たり前といえば当たり前のなのですが…

たとえば吸水部の色の話です。開発の初期、吸水部は黒色がいいのではないかと考えていました。先行他社がそうだったからです。

しかし吸水部の色決めの段階で、その場にいたアルバイトの女性がこう教えてくれたのです。

「黒だと洗い残しが、わからないかも」

言われてみれば当たり前のことでした。きれいになったかどうかを、自分の目で確認できない。それは毎回不安を残すことでもあります。彼女は色見本を見てこう言いました。

「紫系がいいかもです。上品な感じがして、下着と相性がいい色だと思います」

サニタリーについてもそうでした。正直に言うと、それまで僕はサニタリーにそこまで強い不快感があるとは思っていませんでした。

でも話を聞くほどに、蒸れ、ズレ、音、替えられない時間、身体感覚としてのストレスが、積み重なっていることを知りました。

そのとき、よく言われた言葉があります。「男性だから、わからないかもしれませんが」責められているわけではありません。当たり前のことです。

その線を、無理に越えようとは思いませんでした。分かったふりをすることのほうが、ずっと失礼だと思ったからです。

なので僕は誰よりも女性の話を聞かせてもらうことにしました。今でもすべてのお客様からの問い合わせは僕の担当です。

だからPlaySは、「理解している側」が作るショーツではなく、教えてもらい続ける側が作るショーツでありたいと思っています。

試着のときも最初は苦労しました。
まだブランドでも何でもない、男性が作った吸水ショーツなるものを、誰もはいてくれるわけはありません。

でも知人の評判には手ごたえがありました。ランニングが趣味の女性が「これは革命的です」と言ってくれたのです。

やがて日本選手権に出ているようなトップアスリートの中にも「使ってみたい」と言ってくれる人が現れました。

売れなかった日々と、やめかけた話

PlaySは、すぐに皆様に選ばれたわけではありません。開発の2020年、発売の2021年はコロナ渦ということもあり、自社のメイン事業も下火になりました。

僕の不甲斐なさもありますが、9人の社員とアルバイトもほとんどが辞めてしまいました。

相変わらずPlaySの売り上げは横ばいです。ただ、レビューやサポートしているアスリートからは感謝の言葉ばかりでした。

「助かりました!」「安心して試合に出られました!」そういう声が確かに届いていました。でも数字はついてこない。広告を打つ余裕もなく、営業らしい営業もできず、ネット販売だけを細々と続ける日々が続きました。

投資家も見つかりませんでした。借金は少しずつ膨らみ、自分の生命保険や老後のために入っていた積み立てを解約しました。家を売る前の段階で親族に怒られ、一時期は、PlaySのネット販売だけは続けながら、副業で学習塾の教室長をして生活をつないでいました。妻や子どもには本当に迷惑をかけました。

正直「もうやめたほうがいいのかもしれない」そう思ったことは何度もあります。

それでも完全に手放せなかったのは、僕に届く言葉が、どれも「使ってよかった」ではなく「私の人生が変わった」だったからです。

このPlaySは絶対困っている人の人生を変えられる。そう思って歯を食いしばっているときに、事業を買いたいという会社が現れたのです。

吸水ショーツPlaySサポートアスリート

このブランドが存在する理由

そうしてPlaySは生き残りました。とはいえ、まだまだこれからのブランドです。

僕は男性で、わからないことが多い。だから女性に話を聞かせてもらいながら続けています。

この秋からPlaySでは50人のアスリートに、生理の話を聞くプロジェクトを始めました。

6年前、スポーツ向け吸水ショーツを作り始めてから本当にたくさんの話を聞かせてもらいました。

そこで感じたのは、生理は「十人十色」どころではない、ということです。
症状も、悩みも、向き合い方も、比べようがないほど違う。

若い部活生から「私の生理って普通なんでしょうか」と聞かれることがあります。

医学的なデータはあります。ネットを探せば、情報も山ほど出てきます。

でも彼女たちの不安の正体は、そこにはないことが多い。

知れば知るほど不安になる。相談できる人がいない。自分だけが弱いのではないかと思ってしまう。

これまで生理を語る企画は、メディアでも、Webでも、イベントでも、たくさんありました。ただその多くは、数人のトップ選手の声でした。それが悪いわけではありません。でも部活生の「私の」「今の」悩みに、そのまま重なるとは限らない気がしていました。

だから今回は50人の話を聞きたいと思いました。誰かの答えを示すのではなく、「同じように悩んだ人がいた」という事実を、そのまま届けたかったからです。

僕には、生理がありません。
だから、わかっているとは言えません。

ただ、話を聞く役割ならできるかもしれないと思いました。

いくつかの素朴な質問もできるかもしれない。それが当事者ではない自分に許された、ぎりぎりの立ち位置だと思っています。

この立ち位置は僕ひとりで決めたものではありません。話を聞かせてくれたアスリートたちと相談しながら決めました。

PlaySは「正解」を提示するブランドではありません。誰かの身体を、誰かの言葉で定義することもしません。

ただ選択肢があること。
ひとりじゃないと思えること。
そのための道具と、場をつくりたいと思っています。

最近、うれしい言葉があります。
「PlaySを毎日はいています」

そう言ってくれるのは20代や10代の人たちが多いんです。サニタリーの日のために作ったはずなのに、気づけば「今日はこれでいい」と何も考えずに選んでくれている。「これが」でも「これで」でも構いません。

あなたがサニタリーに困っているなら。毎日を一緒に進む下着を探しているなら。PlaySをぜひ近くに置いてもらえたらと思っています。

PlaySが存在する理由は、PlaySの側にたくさんの女性がいてくれたからです。

これからも

サニタリーのための特別な下着であることはもちろん、あなたの毎日に、静かに続いていく下着として。 必要なときに思い出してもらえたらうれしいです。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
PlaySをどうかあなたのブランドとして育ててください。

PlayS 坂上大介

坂上の著書です
「わからないから寄り添える」

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