"その日"を超えて、私は強くなる。
アスリート50人×生理

#2

サッカー
川澄奈穂美

Nahomi Kawasumi

DSC_8763_1.jpg__PID:ec095c49-fa6f-43d7-a6ea-75df4a9b30e0

ナプキンがズレて太ももをつたって下に…
世界を経験したからわかること

「ぜひお話させてください」

川澄選手から返事があった。
40歳になった今年も、アルビレックス新潟レディースでゴールやアシストを決める。

「現役の選手だから伝えられる」
川澄選手はそれを大切にしている。

現役女子選手として初のJFA(日本サッカー協会)理事にも就任した。
生理に関して、お話を聞いた。

5C879D93_.jpg__PID:9a2aa8f6-fed7-4d2f-8b04-f84431b769e6
1C62610_.jpg__PID:8b68eb27-0ae6-4d3b-b5eb-cc5186d05823

インタビュー(YouTube)

全編はYouTubeにて

以下、インタビュー抜粋

初めて生理が来た日のこと

「初潮が来たのは、12~13歳のときです。ちょうどチームメイトの上尾野辺選手の家に泊まりに行っていた日でした。仲が良くても、なんとなく言えなくて。その日は、次の日まで――トイレットペーパーをナプキン代わりにして過ごしました。生理に関しては3つ上の姉がいたので、なんとなくは知っていました」

「中学生・高校生のときはナプキンを持ってトイレに行くっていうのは少し恥ずかしかったですね。当時はまだタンポンの存在を知らなかったので、とにかくナプキン一択で乗り切るっていう形だったんですけど、たぶん経血の量が多かったので頻繁に替えなければいけないですし、それこそ替えるタイミングがなくて漏れてしまったりという経験も一度や二度ではなかったです」

川澄YouTube本編集.00_01_30_26.静止画006.jpg__PID:8f2ca7cf-5ea4-4dd8-a613-dcb1739b83b5

中学生や高校生のときは、生理がサッカーに与える影響はあまり感じなかったという。

「当時は『今日、生理なんだ』という程度なら仲間内では話せました。でも知識や情報量は少なく、いい情報交換ができていた実感もなかった。指導者は中学も高校も男性で、報告するような文化もありませんでしたね」

大学生になって変わった身体

大学生のころから、生理痛がひどくなって眠気も強くなりました。練習から帰ってきて、ご飯を食べてお腹いっぱいになると、そのまま座布団で寝てしまうような日もありました」

「痛みに関しては私は根拠もなく薬が嫌いだったんです(笑) 『薬は飲まないほうがいい』 という思い込みで痛み止めは飲まなかった。今思えば、ちゃんと婦人科に行って対処すべきだったな、と感じています」

スクリーンショット 2025-11-22 230519.png__PID:a2be3d55-93d0-497a-84f6-545dd6007cf0

ナプキンが落ちそうになった

「夏場、汗でナプキンの粘着がなくなったんだと思います。羽根なしで練習していて、急にももの裏を伝ってナプキンが落ちる感覚が分かったんですよ。『え、悲惨……』と思って。もしピッチにポトッと落ちたらどうしよう、と。慌てて、ももの裏を押さえながら走ってたら、チームメイトに「肉離れしたのかと思った!」と言われて(笑)」
 
「笑い話にはなったけれど――思春期の子が同じ状況になったら、と思うと心が痛いです。大人なら笑い話で済むかもしれない。でも中高生には大きすぎる恥ずかしさだと思うんです」

「生理でパフォーマンスが落ちるアスリートも多いと聞きますが、私の場合、いざ動き始めると、逆に体が軽く感じてパフォーマンスがいいと感じるときもあります。永里優季選手にその話をしたら『わかる!』と言ってくれて、同じ感覚を持つ人もいると知りました。不思議なんですけど、生理って本当に人それぞれなんだなぁと思います」

大ケガと出会いが
ピルのきっかけに

川澄YouTube本編集.00_03_28_19.静止画007.jpg__PID:ed5c1a8b-2b56-4ce3-976b-2548ab15e5f8

「大学4年のとき、左膝の前十字靭帯断裂で手術をしたんです。その直後に生理が来たのですが――点滴していた膝の痛み止めが効いて、お腹の痛みが全くなかった。そこで初めて思いました。『薬って、こんなに効くんだ』って(笑)」

「その後、『なでしこチャレンジ』で婦人科医でチームドクターの松田先生と出会い、ピルの存在を知りました。周期の調整や痛みの軽減、経血量が減ることも知って、試してみることにしました。私は副作用もなく、うまく続けられています」

41866978-F570-4497-AAEA-8F7EE9C35A99.jpg__PID:f64b67cf-6ba0-44dd-9ae9-f84e5f1dfc81

「アメリカに渡って驚いたのは、朝は全員が毎日コンディションを提出するのですが、睡眠、気分だけじゃなく、生理かどうか、何日目か。そういうのがデータとしてスタッフ間に共有されていました。妊娠・出産後に復帰する選手も多く、卵子凍結の補助をするチームもあります。日本も、こうなっていったらいい。JFA理事としても発信していけたらいいなと思っています」

日本のサッカー界も
変わりつつある

「昔なら『生理で休むなんて!』という空気もあったと思います。でも今は監督とも普通に会話があります。「生理の日ってこうなんでしょ?」と聞かれて話をすることで、無理をしない選択がしやすくなる。日頃からコミュニケーションを取っておくことが大切だと思います」

「男性も、日頃から男性女性という区別ではなくて、具合が悪そうな人に『大丈夫?』『体調悪いの?』と声をかけることが大切かなと思います。返事が『お腹痛くて…』なら『何かできることある?』と次に進めばいいと思う。それだけで、救われる選手や女性はきっといると思います」

DSC_8386.jpg__PID:2be999bd-fbae-44ce-ad22-136cca9e0b6e

部活生に伝えたいこと

「知らなかったものに出会って、試してほしい。私もタンポンは友人にすすめられて。使ってみたらびっくりするほど快適でした。吸水ショーツも半信半疑だったけど、7〜8時間家で使って全然問題なくて驚きました。思春期は恥ずかしい気持ちや話しづらさもあるけれど、生理は恥ずかしいことじゃない。情報をつかむ手段はたくさんある。いろんな選択肢を試して、自分に合う方法で快適に過ごしてほしい。みんな、ひとりじゃないから」

インタビュー(YouTube)

全編はYouTubeにて

他のアスリートの話を読む

t6_.jpg__PID:e5edced3-83e6-44f3-aaf6-2c2bcd1841b8
DSC_8763_1.jpg__PID:1ab8edbb-cf43-42a2-a7ad-d299ae56dbd7
P1000415_.JPG__PID:60001da3-bd7a-4403-bbac-28542bb9a4d6