"その日"を超えて、私は強くなる。
アスリート50人×生理

#7

スタントウーマン
坂口茉琴

Makoto Sakaguchi

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日本のアクションを支える体は
生理という現実とも戦う。

アクション大作のヒロインを一手に引き受ける

「キングダム」の羌瘣(きょうかい)。「ゴールデンカムイ」の アシㇼパ。「今際の国のアリス」のウサギ。アクション作品のファンならずとも、多くの人が知る映像大作で、ヒロインのスタントダブルを担当しているのが、坂口茉琴だ。

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「スタントダブルは、女優さんとか俳優さんが演じるには危ないことだったり、難易度が高いことを代わりにやる仕事になります」

「18歳からやっていて、今10年ぐらいやってます」

低予算の作品からキャリアをスタートし、徐々に大きな現場へ。作品ごとに求められる動きは違い、そのたびに身体を作り直す。

「作品ごとに“こういう動きを習得していきましょう”っていうのがあるんですけど、役者さんによっても変わります」

たとえば『キングダム』では、アクションの強度によって役者と分担する。

「戦うところはご本人がやって、激しくやられるところは私がやる、みたいな。半分半分くらいのイメージです」

また、「今際の国のアリス」では、産後すぐの撮影に臨んだ女優の土屋太鳳のトレーニングをサポートした。

「まずは“動ける体に戻しましょう”っていうところから一緒にスタートして、そこから撮影を頑張っていった感じでした」

その現場には、“演じる人を支える身体”がある。

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インタビュー(YouTube)

全編はYouTubeにて

高所でも、落ちたら終わり。でもやる

「火力発電所の15階とかで、幅が20cmくらいの柱の上を走らなきゃいけないっていうのがあって」

命綱はある。それでも恐怖は消えない。

「命綱はついてるんですけど、やっぱりドキドキはしますね」

安全対策は二重三重に取られている。
「人が3人ぐらいで支えてくれて、さらにバックアップもついてるんですけど」

それでも、“落ちるかもしれない場所”に立つことに変わりはない。
「もし落ちたら、みんなが支えてくれるはずなんですけど…やっぱり怖さはあります」

危険を前提にした仕事。その緊張の中で、体は常に消耗していく。

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体を合わせると、生理が乱れる

「女優さんの体型に合わせなきゃいけないので、食事制限して体脂肪率を落として、シルエットを似せていくんですけど」

“似せる”という行為は、見た目以上に身体への負荷が大きい。

「どうしても生理不順になっちゃったりだとかっていうのがあるので」
「そういう中での体調管理は、結構大変だなと思います」

役に近づくほど、自分の身体は遠ざかっていく。その歪みは、静かに体調として現れる。

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休めない現場で、生理と向き合う

「スタントって裏方なので、役者さんみたいに休憩のタイミングがなくて」
「本番見守る→セッティング→スタンドイン→また本番、っていう流れなので、トイレに行ける時間がほとんどないんです」

さらに、場所も選べない。
「山の中とか森の中だと、そもそもトイレがなかったりするので」
「仮設トイレの中でどう過ごすか考えたり、白い衣装だとこまめに替えられるように自分で調整したりします」

スタント特有の装備も、身体に影響する。
「ワイヤーハーネスって、ベルトが体に食い込むので擦れが出たり」
「馬に乗る撮影だと、体の動きで摩擦が強くなったり」

その中で起きるのが、ナプキンの問題だった。

「ずれてるんじゃないかっていう感覚があったり、蒸れから擦れて、かぶれたり痒くなったり」

本番は動ける。でも合間で一気にくる

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「本番の一瞬は、痛みを忘れて動けるんですけど」

撮影は連続する。
「本番→セッティング→本番って繰り返す中で、合間になると“腰痛いな”とか“しんどいな”って一気にくるんです」

PMSの影響もある。
「生理前は腰痛が出たり、眠さがあったり、体温が下がってる感じがしたり」
「そうなると怪我の心配もあるので、気をつけながらやってます」

対処も、自分で積み重ねてきた。
「腰はこまめにほぐしたり、冷やさないようにしたり」
「休める時は、意識して休むようにしてます」

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女性が“自分で解決してきた問題”

「アクション部って男性が多くて、6人中女性1人とかが普通でした」

最近は少しずつ変わり始めている。「女性が複数いる現場だと、“トイレ行ってきていい?”って声をかけて助け合ったりしてます」

それでも、まだ環境として整っているとは言い難い。

「生理用品までは基本用意されてないので、自分で用意するか、女性同士で声をかける感じです」

なぜ変わらないのか。
「生理って、今まで女性が自分で解決してきてしまった問題だと思うので」

だからこそ、発信する。
「発信することで、“そういう問題があるんだ”って知ってもらうところから始めていけばいいと思ってます」

実際、アクションチーム向けにPlaySと共同で行った生理セミナー後には変化があった。
「監督さんとかが、“トイレのタイミングとか考えたことなかった”って言ってくれて」
「知ってもらうだけでも、意識は変わるんだなって思いました」

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無理をしないで、相談してほしい

「若い頃って、“頑張らなきゃ”“休むのは悪”って思いがちなんですけど」
「体は一生付き合っていくものなので、無理をしないでほしい」

「しんどかったら相談してもらえれば、現場の中で休めるように調整もできるので」

新しい選択肢についても、こう話す。「今、不快に思う瞬間があるなら、新しい選択肢を試してみるのはアリだと思って使ってみました」
「最初は不安だったんですけど、全然動きにも対応できて、すごく良かったです」

「無理をせず、ちゃんと誰かに相談してほしい」
危険な現場で体を張り続けてきた彼女が、最後に残した言葉は、驚くほど静かで、現実的だった。

インタビュー(YouTube)

全編はYouTubeにて